特に我が家は、クリという、堅く、重く、反りやすい材料を多用し、階段や敷居なども、このクリ材を使うように指示されていた。「もう、こりゃあ、ダメだね」棟梁が指さす南の和室の鴨居(かもい)を見ると、クリでできた鴨居の溝が、目で見てもわかるほどねじれあがっている。確か、日沢建設で、1ミリの狂いもないように溝を彫ってぴったりと納まっていたはずなのに、すでに使い物にならなくなっていた。「ほら、5ミリ以上動いている。
[参考情報]
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これじゃあ、鉋をかけて誤魔化すというわけにもいかない。やり直ししないと、建具が入らない」棟梁の言葉に、私は愕然とした。全てが全て、やり直さなくてはいけないということではないにしても、こうしたやりなおし個所は、1つや2つではなかった。事態を目にするにつけ、我が家のクリの木は、すでに伐りだされている木であるにもかかわらず、まるで生きているかのように、まだ暴れているのだということを実感する。ただ、この時点では、まだ、私自身は、それほど工事の遅れには気づいていなかった。だから、棟梁やFさんの仕事が丁寧できれいなのをいいことに、どうせ内装をしてもらうならと、台所から洗面台、収納、本棚、仕事場のデスクまで、すべてを造り付けの家具にしてもらった。おかげで、我が家では、家具というものはひとつも買わずに済んでいる。そのぶん、さらに手間が増えることになり、それが後々、我が身に振りかかってくることなど、当時はほとんど考えていなかった。